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産業医の不法行為を認めた事例(大阪地判H23.10.25)

(事案の概要)
 本件は,自律神経失調症により休職中であったXが,勤務先の産業医であるYとの面談時に,詰問口調で「それは病気やない,それは甘えなんや。」,「薬を飲まずに頑張れ。」,「こんな状態が続いとったら生きとってもおもんないやろが。」などと非難されるなどしたため,病状が悪化し,このことによって復職時期が遅れるとともに,精神的苦痛を被ったとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,逸失利益の一部の賠償及び慰謝料の支払等を求めた事案である。
 
裁判所の判断)
 Yは,産業医として勤務している勤務先から,自律神経失調症により休職中の職員との面談を依頼されたのであるから,面談に際し,主治医と同等の注意義務までは負わないものの,産業医として合理的に期待される一般的知見を踏まえて,面談相手であるXの病状の概略を把握し,面談においてその病状を悪化させるような言動を差し控えるべき注意義務を負っていたものといえるとした上,産業医は,大局的な見地から労働衛生管理を行う統括管理に尽きるものではなく,メンタルヘルスケア,職場復帰の支援,健康相談などを通じて,個別の労働者の健康管理を行うことをも職務としており,産業医になるための科学研修・実習にも,独立の科目としてメンタルヘルスが掲げられていることに照らせば,産業医には,メンタルヘルスにつき一通りの医学的知識を有することが合理的に期待されるものというべきであるとした。
 そして,たしかに自律神経失調症という診断名自体,交感神経と副交感神経のバランスが崩れたことによる心身の不調を総称するものであって,特定の疾患を指すものではないが,一般に,うつ病や,ストレスによる適応障害などとの関連性は容易に想起できるのであるから,自律神経失調症の患者に面談する産業医としては,安易な激励や,圧迫的な言動,患者を突き放して自助努力を促すような言動により,患者の病状が悪化する危険性が高いことを知り,そのような言動を避けることが合理的に期待されるものと認められるとし,Xとの面談におけるYの言動は,上記の注意義務に反するとした。
 さらに,本件面談とXの病状悪化との因果関係については,Xの病状悪化が本件面談におけるYの言動により生じたものであるとして因果関係を認め,Xの復職が遅れたことによる減収は30万円を下らないものであるとし,Xの精神的苦痛を金銭で慰謝するには30万円が相当であるとした。 

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