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判例(裁判例)紹介

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脱法ハーブ(危険ドラッグ)と故意(H24.12.6判決)

(はじめに)
 弁護士といえば,弁護人としての活動を思い浮かべる方が多いと思います。実際には,弁護士が扱う事件全体の中では,刑事事件は少ないですが,当事務所でも,数多くの刑事事件を取り扱っています。
 中でも,自動車運転に関する刑事事件は多いものの1つですので,今回は,危険運転致傷事件に関する裁判例をご紹介させていただきます。
 また,最近,いわゆる脱法ハーブ(危険ドラッグ)が社会的に問題視されていることから,脱法ハーブ(危険ドラッグ)の影響による危険運転致傷事件に関する裁判例(京都地判平成24年12月6日(平成24年(わ)第817号危険運転致傷被告事件))をご紹介します。
 
(事案の概要)
 本件は,被告人が運転開始前に使用した脱法ハーブの影響により,幻聴,幻覚又は意識消失等意識の変調を来し,前方注視及びハンドル・ブレーキ等の適切な運転が困難な状態で自動車を走行させ,その際の追突事故によって2名を負傷させたとして,危険運転致傷罪に問われた事案である。
 弁護人は,被告人が,本件事故当時,正常な運転が困難な状態であることの認識がなかったことから,危険運転致傷罪の故意が認められず無罪である旨主張した。
 
(京都地方裁判所の判断について)
 本件の争点は,被告人における危険運転致傷罪の故意の有無である。
 京都地裁は,被告が平成20年冬頃からいわゆる脱法ハーブの吸引使用を開始し,使用後に自動車を運転した際,対向車線に大きくはみ出して走行したり,突如ブレーキをかけて停止することがあったこと等を認め,被告人は,運転を開始した段階で,脱法ハーブを使用することによって意識障害等を起こすことがあることを認識していたことは明らかであり,被告人が脱法ハーブ使用後に自動車を運転した際,その影響によって正常に運転ができなかったり,そのおそれが生じた経験が多数回あったことが認められること,妻と脱法ハーブによる事故に関するニュースについて会話した際には妻から脱法ハーブ等の使用の有無について追及を受け,事実に反してこれを否定する発言をしていたものである上,当時被告人は脱法ハーブを使用した上で自動車運転を繰り返しており,その際には「固まる」状態になったり,その間の記憶がないといった経験を繰り返していたものであるから,被告人は,脱法ハーブを使用し,その影響下で自動車を運転した場合,運転操作等が困難となって自動車事故を引き起こす危険性を一層強く認識したものと推認することができるとした。
 そして,以上によれば,被告人は前記運転開始の時点において本件脱法ハーブをその直前に使用したことにより自動車の正常な運転が困難な状態となり得る蓋然性を認識していたといえることから,被告人に危険運転致傷罪の故意があったことが認められると結論づけた。
 
佐世保・長崎の弁護士 
竹口・堀法律事務所 

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